顔の見える小さな仕事で、人と地域を幸せにしたい
2021.09.03
坂田まことさん
- デュアルライフ
- 起業
宮崎市は、国富町・綾町と連携協約を結び、地域経済の活性化や生活機能向上などに関して、連携し取り組んでいます。国富町は宮崎市内から車で30分ほど。町の約60%が森林という自然に囲まれた環境で、農業も盛んな場所です。
今回は、東京都自由が丘や神奈川県鎌倉市で「オーガニックエステ×コスメショップ ORGANIC MOTHER LIFE」を運営し、店舗で使用する化粧品を開発する「植物研究所」を国富町に作られた、坂田まことさんにお話を伺いました。
坂田 まことさん(30歳) 東京都からのIターン
株式会社オーガニックマザーライフ
ORGANIC MOTHER HOUSE®︎ -植物調合研究所- 代表
デュアルライフのきっかけはこの家との出会い
愛知県出身で、19歳の時に結婚をきっかけに都内へ移住。その後、オーガニックコスメの仕事を自宅の一室で始めました。
当時は子育てをしながら、ブログを使ってお客さんを集め、オーガニックエステとコスメのサロンを運営していました。ブログを始めたのは2005年くらいで、ちょうどSNSの始まりの時期。SNSそのものの注目度も非常に高かったと思います。
そんな仕事をしているうちに、私のように働く意思があっても、子育てや家庭の事情などで働けない女性を支援したいと思うようになりました。
セラピストとして施術をしながら、その技術を同じような環境下に生きる女性に継承して活躍してほしいと、「手に職をつけて家庭でも働けるようになるため」のエステ技術者を養成する学校「コットンハウス®︎」を2015年から始めました。
宮崎を初めて訪れたのは、2020年7月。宮崎に住む友人に「有機農産物がたくさんあるから来てみたら」と誘われたのがきっかけでした。そこで紹介されたいろいろな農家さんたちが面白い人ばかりで。他県と比べ、有機農業への意識が高いことに驚きました。
2度目の宮崎訪問の際には、生活拠点を作るために家探しをしたんです。そしたらエネルギーを感じる家があって。宮崎県産の杉100%の自然無垢の家に出会い、迷わずここでものづくりがしたいと思ったんです。
この家で、ちゃんと顔の見えるオーガニック・エシカル化粧品の開発を思いっきりやろうってひらめきました。
(※エシカル:人や地球環境、社会、地域に配慮した考え方や行動のこと)
それから2021年5月に国富町にこの「ORGANIC MOTHER HOUSE®︎」を設立。この家を「植物研究所」兼生活拠点として、東京と宮崎のデュアルライフが始まりました。
売りたいのは「モノ」ではなく、「物語」
私達のオーガニック・エシカル化粧品の原料は、有機農家さんが手掛ける生産物や農業残渣、耕作放棄地の未収穫植物、自社農園の薬草などから作られています。
収穫の段階で取りきれなかったり、取っても捨ててしまったりしたもの。例えば柑橘だと、果汁を絞って他の部分は捨ててしまうところが多い。それを「残渣」と言います。
そういった残渣を、農家さん達から原料として仕入れています。
ORGANIC MOTHER HOUSEでは、そんな残渣から精油や蒸留水・植物エキスなど抽出し、化粧水や美容オイルなどに使用しています。オーガニックをいいものと思ってくれる人が喜んでくれると嬉しいんです。
9月にはこの家のお風呂場にオリジナルの植物蒸留器も設置します。
100Lの大型蒸留設備は基本男性の力が必要なんですが、クレーンをつけているので女性でもできる仕事なんです。女性に活躍してほしいという感覚は「コットンハウス®︎」開校時と変わらず持っています。
自宅でもできる小さな作業だから色んな人がこの仕事をできると思っています。
初めはうまくいかないこともありました。
東京に出た時もそうでしたが、デュアルライフを始めたばかりのときは、身寄りも友だちもいないので、その地域のルールやマナーが分からなかったのが大変でした。地域を盛り上げるために何ができるかと動こうとしていたんですが、上手くいかず。
何かしてあげようとか、何かしてもらおうっていう感覚がダメだったと思うんです。地域のルールやマナーを学んで、感謝の心を持って地元の方々と接するようになりました。
一度溶け込んでしまうと、本当によくしてもらえました。おかげで、初めての所でもなんか頑張っている人がいるって知ってもらえたんです!
そこから多くの仲間が集まるようになっていき、同じ志を持つ女性たちと一緒に地方と都心が繋がる仕事を始めました。
オーガニックってマイノリティ。開放的にして、公共性を高めたい!
これからは宮崎にコミットして、どこまでできるか試したいと思っています。地域への公共性を高めていきたいんです。
具体的には、残渣をどこまで減らせるか、地域に雇用を生み出せるかとかですね。
オーガニックはクローズなイメージが強いですが、できる限りオープンにしたいと思っています。例えば、オーガニックに興味のある人へのツアーや、興味のある学生や不登校の学生対象のインターンなど。
こういった発信や行動ができたら、就職のための人口流出を少しは減らせるんじゃないかなと思っています。人が来れば関係人口は増やせますし、移住にも繋がっていったら嬉しいですね。
そして、宮崎県の有機農業や自然栽培への意識の高さを知ってもらえるような製品づくりを、地元の女性たちと一緒に行っていきたいと思っています。